飛鳥アートヴィレッジ

「飛鳥光の回廊」飛鳥寺作品によせて

2017年09月22日-paper-cutting 切り絵, 飛鳥アートヴィレッジ

お彼岸、秋分の日に、飛鳥寺、日本最古の飛鳥大仏様と史上初のコラボレーションという素晴らしい機会をいただけましたこと、植島御住職様と明日香村の皆様、担当様に心より感謝いたします。ありがとうございます。

・きっかけ

昨年のアートプロジェクト「飛鳥アートヴィレッジ」において、明日香村の伝承芸能や行事について取材した6メートルの龍の切り絵作品を作りました。その作品をご覧いただき、お声掛けいただいたのがきっかけです。

・作品について

今回飛鳥大仏様という大変貴重な文化財と作品が共演することになり、当然様々に気を配らねばならない点がありました。

まず、大仏様のまわりは造られた当時の石の台座が残っており、中には立ち入れません。
どうしようかとご住職や皆様とご相談させていただく中で、入れないのであれば切り絵を影絵のように投影したらどうかというアイデアが出ました。ならば、現在失われた光背を再現するイメージはどうかとなり、さらに、もともとあった脇侍仏は大きな切り絵で作ろうと、あっという間に構想が浮かびました。

日本書紀にもあるようにこちらの大仏様は約1400年前の鞍作止利(くらつくりのとり)が造ったとされ、失われた光背や脇侍は、止利仏師の作と伝えられている他のお寺の釈迦三尊像を参考に描きました。

そして、描くために仏像について学ぶ中で、「蓮華蔵世界観」について知りました。
古の仏師たちが仏様の姿を形作るにあたり、当時お坊さんに説明を受けたのが、梵網経(ぼんもうきょう)というお経にある「蓮華蔵世界観」で、大きな海に蓮が咲き、その上に更に何層もの世界が広がったところに須弥山という山がある。そこに仏様たちがおられて、天空には美しい天人や鳥が舞うという、それはとても美しい世界観でした。
これを知ることにより、造形するための芯となるイメージを心にとらえることができ、この世界観をもとに描き紙に刻むことで、飛鳥大仏様を莊嚴する作品を作りたいと考えました。

・文化伝来の地

天蓋などのお寺の装飾に意味があるように、今回描きこんだモチーフにもすべて意味があります。
飛鳥寺は、大陸からの文化や技術が伝えられ花開いた歴史的な地であり、中でも私は瓦に心惹かれました。
日本最古の瓦が葺かれた本格寺院で、瓦当には素朴な蓮の華が刻まれています。この丸い蓮の文様が文化の架け橋のシンボルのように感じられ、脇侍仏の一番上に描き込みました。
また、ちょうど打合せでこちらを訪れた日に、60年前にこちらで発掘された珠が、飛鳥時代の真珠であることが確認されたと、ニュースで報道されました。仏教荘厳具で最古とみられ、半島や西アジアから伝えられた可能性もあるということです。
このニュースを知って、「仏教の七宝」のひとつとされる真珠が、まさに天から降る恩恵のように感じ、作品の中にきらめく珠や泡のように描き込みました。
光背の曲線も、規則性がありながら有機的で大変美しく、線を描き追いながら当時の作者の豊かな感性に感動していました。

・作り、祈る

今のように重機もガス燃料も使えない時代に、これだけの大きな仏像を作ることは、命がけの行為であったと思います。
それでも美しく立派な物を作り仏様に捧げたいという当時の人々の思いが、飛鳥大仏様を通して伝わってくるようで、とても尊く感じられます。

東北の震災が起きたあと、祈りとはなんであろうと自問し続けてきました。作り続ける中で、自分にとっては、無心に出来得る限り美しいものを作り捧げることが、一つの祈りの形であると考えるようになりました。
また、私は現代の作家ですが、古から伝えられた文化財に学び、手で作ることにより、当時の人々の感覚や、心に触れることができるように感じています。それが、この作品をご覧くださった方にも広がっていけばと思っています。

ここ飛鳥寺は、大陸から半島を経由して伝来した祈りの心を、時空を超えて感じられる場所です。ご参拝の際には、どうかその心にも思いを馳せていただけたらと願っています。

asukadaibutu

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