2020年12月29日-paper-cutting 切り絵
今年一番よかったことを思い返して書いています。
なにより、国内外4か所の展示に関われたこと、中でも、山口市の雪舟画室雲谷庵跡での企画の実現は本当にありがたいことでした。
秋吉台国際芸術村のアーティスト・イン・レジデンスのフェローシップに採用された企画で、応募時には2020年が雪舟生誕600年とは知りませんでした。偶然にも節目の年に当たり、パンデミック渦中ではありましたが、山口県内で様々な関連催事が行われる中、「透かし見る雪舟」も10月に計画通り実現することができました。
現在の雲谷庵跡は明治時代の再建で、茅葺屋根の魅力ある建物ですが、昨年訪れたときには人の気配も少なく、少しさみしい印象を受けました。
雪舟の水墨画に思いを馳せ、もしここで展示ができるなら、地域にとっても作家にとっても、そしてもしかすると雪舟さんにとっても、喜ばしいことなのではないかと、想像が駆け巡ったことを覚えています。
おかげさまで3日間の展示会期中はたくさんの方がお越しくださいました。
ご来場の皆様、管理する山口市の方にも、作品と、今までになかった空間の使われ方、見え方を楽しんでいただけたと思います。
観てくださった方のご感想、感動されている様子、文化財保護課の方の「今後雲谷庵を活用します」というお言葉、それが今年本当に一番うれしかったことです。
アートという領域は広く、美しいもの、楽しいもの、心を豊かにするもの、生活を彩るもの、既知の感覚を揺さぶるもの、問題を提起するもの、考えを促すもの、物事の見方を変えるもの、様々な役割があります。私も一ファンとしてそれらを感受することが好きです。そして作家としては、手で紙を彫ってものを作る行為を突き詰めることで、それによって生まれる美しさと、人間の手仕事の可能性を、観る方と共有したいという思いで活動を続けてきました。
物を作りその技術を高めたいという欲求は非常に個人的なもので、ともすると作家の自己満足で終わってしまいます。それも悪いことではありません。しかし、物を作るという個人的な行為が、他者との関わりの中で、大げさに言えば社会の中で何らかの役割を果たすとき、そこに幸せな化学反応が起きます。私が、自分の作品を残すことだけではなく、アートプロジェクトに関わっているのは、この点でとてもやりがいがあり、嬉しいことだからです。そのことに改めて気がつけたのも、今年の大きな収穫のひとつでした。
テーマについて調べ、解釈し、作品にして提示する。それによって喜んでくださる人がいる。
私にとって、何より嬉しく、奇跡のようにありがたいことです。
それが今年この状況下でも実現したことは、望外の感動でした。
様々な企画を行えたのは、ひとえに、関わって下さった皆様、お力添えをいただいた皆様のお陰です。
おひとりおひとりのお顔が思い浮かび、感謝の気持ちでいっぱいです。
本当に、どうもありがとうございます。
今年の取り組みの中で、今までできていなかった課題や、自分で作っていた制限も改めて見えてきました。
少しずつでも成長し、よいものを作っていけるように活動していきます。その過程において見えてくるもの、そこから起きる出会い、楽しみです。
来年の活動は2月の個展(京都祇園小西2月20日~28日)から始まります。
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皆様におかれましても、今できること、今しかできないことを日々の中で発見され、取り組まれ、健康で充実した時になりますように、心から願っています。