2021年5月

【和紙探訪2】福井越前

2021年05月23日-Paper Making 和紙探訪

和紙探訪二か所目は、全国を代表する産地の一つ、福井県越前市へ。

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2018年7月25日、2019年10月13日

襖紙や障子紙を取り扱う楞川さんと、一緒に展覧会を企画されている上村さん、中川さんにご案内頂き製紙所を巡りました。

越前は大陸から朝鮮半島を経て製紙技術が日本に伝わった最初期の地域とされ、歴史の厚みを感じます。

まず最初に、千五百年の歴史を持つ「岡太神社 大瀧神社」にお参りし感激しました。日本で唯一「紙の神様」がお祀りされている神社で、紙祖神「川上御前」は女神です。川上から現れて紙漉きを伝えたとの伝承があり、古来から女性が紙漉きに関わっていたことが感じられて興味深いです。

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重厚な屋根が圧巻です。
まだここで誰にも会う前から、越前の人々の紙、ものづくりへの思いと誇りが伝わって来るようでした。

和紙リサーチを始めて数年経ち、訪問地が増えるに連れ、その場で少しずつそれぞれの産地の特色を感じられるようになりましたが、時間を経てあらためて振り返ると、一つ一つの工場で独自に工夫を凝らされて紙を作られていることがわかって興味深いです。

越前では襖紙を多く作られていて、その場合簀桁も大きいのですが、二人がかりで向かい合って動かして漉かれている工場や、漉きは手漉きで乾燥が自動化されている製紙所が、印象的に記憶に残っています。
二人で作業をされている現場を見学させていただいた五十嵐製紙では、皆さんの息の合った姿に見惚れました。

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五十嵐製紙の皆さん。かっこいいです!

求める紙をお伝えするため、作品を持参したのですが、皆さんの切り絵のイメージと違うことに驚かれて、お仕事中にも関わらず心よくお話をして頂けて、本当にありがたかったです。

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山次製紙所では特別に紙漉きを体験させていただきました。それもお仕事用の簀桁で。実はこれが初めての紙漉き体験でした。全くおぼつかないです。

二度目に訪れたときは、伝統産業の工房見学やワークショップが行われるイベント「RENEW」の最中で、テオ・ヤンセンの展覧会が開かれてました。

「ビースト」という風力で生き物のように動く作品で知られるテオ・ヤンセンですが、ここでは越前和紙を使用した作品があり、動いているところも見られて楽しかったです。
和紙の質感はもちろん、構造が折り紙のようで、日本の紙工芸を意識されたのかなと感じました。

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この強度ある和紙を作られた滝製紙所もRENEWでオープンファクトリーをされていて、ビーストに使われた和紙を触らせていただきました。
鎖で吊ってバランスを取っている大きな簀桁は、瀧さん一人で漉かれていました。「波紋が十字になるように」と、お話しながら実演してくださいました。

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産地を訪れる際、お仕事中の工場の見学は、ご紹介いただいたりアポイントを取っているにしても気が引けます。
この点、伝統産業が盛んな福井県では、オープンファクトリーやワークショップが行われる上記のイベントRENEWが鯖江市・越前市・越前町で毎年開かれており、期間中は多くのものづくりの場が一般に公開されます。
パンデミック以降、刻々と状況が変わりますが、ご興味のある方はぜひウェブサイトでこまめに情報を得て訪れてください。

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「RENEW」東大襖部の襖の張替え実演

また、以前には和紙工房ツアーも旅行会社の企画として行われていたようで、こういったツアーに参加されるのもいいと思います。

イベント時以外でも、和紙産地には和紙に関連する施設があるところが多く、その地域の紙づくりの歴史を学べますし、販売所があれば和紙も求めらるのでおすすめです。施設の方のお話はとても勉強になりますし、そこから縁がつながることもあるかもしれません。紙漉き体験も、私は時間があれば必ずしています。何度やっても下手ですが、その地の水に手を浸すのが好きです。
越前は大きな産地のため、和紙関連施設も複数あって充実しています。

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「卯立の工芸館」和紙づくりの工程を見学しました。

現在、大々的に訪問したり旅行が難しい状況は残念なことですが、動けない分できた時間を、オンラインで工房のウェブサイトを見て学んだり、ショップがあるサイトから和紙を購入するなど、今という時期を活用しながらできることはたくさんあります。この、じりじりした時期が、今後大きな意味を持ってくると思います。

ぜひ、手漉き和紙に触れ、その一枚に至る過程に想像をめぐらし、使ってください。
例えばこちらをご覧になっている方が作家だとしたら、一度は手漉き和紙に触れてください。一人の作家が使える数はしれているかもしれませんが、それが百人、千人・・・と増えていけば、それだけ和紙産地を応援できます。

手漉き和紙は、効率で言えば機械抄き紙には敵いません。逆に言うと、特別な機会に使うことにとても向いています。大切な作品に、上質な製品に、建築資材に(防火処理も現在は可能だそうです)、特別な人へのお便りに、ぜひ一度、身近な産地の手漉き和紙を使ってください。
私達が使わなければ、数百年の歴史を経て伝わってきた各地の和紙産地が無くなってしまいます。

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五十嵐製紙の皆さんと。楮と一緒に撮っていただけて嬉しかったです。

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大陸から日本に製紙が伝わった最初期から、和紙を代表する産地として現在も紙作りが盛んに行われていることは、本当に貴重なことです。今後機会がありましたら、その歴史を湛える空気に身を浸しに、越前に訪れてください。

福井県和紙工業協同組合 越前和紙関して総合的な情報が得られるサイト。関連施設パピルス館や越前和紙の里観光マップも充実しています。
RENEW  工房見学やワークショップが同時開催されるイベント

西野商会 多様な和紙の取り扱い
五十嵐製紙 野菜の皮を漉き込んだフードペーパーなど、和紙の可能性を追求されています
山次製紙所 製品ラベルなど、和紙の質感を生かしたデザイン性の高い和紙を作られています
滝製紙所 美術作品や内装他、多様で創造的な和紙

カドカワ 襖紙、障子紙、壁紙等内装材取り扱い
太陽 壁紙、襖紙、和紙を使用した照明他を展開

越前和紙を使用した作品
三間用の通常より幅の広い(158cm幅)の鳥の子紙に特殊塗料を塗り、暗闇で光る効果を持たせました。

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Omphalos 2021/paper-cutting/Echizen washi, varnish/156x156x110 cm
天円地方と陰陽思想から得られた二本の線を一枚の紙に刻み、持ち上げることで生じた二重らせん。