2016年12月05日-Paper Cutting 切り絵, Project, AiR
公募で参加させていただいた飛鳥アートヴィレッジ2016作品展が終了しました。
憧れの明日香村を取材し、作品化し、現地で展示でき本当に幸せでした。
旅行で来ていたときには知り得なかった伝承に触れられたこと、また、何度も訪れる中で村の方々とのご縁ができたことは、何よりの宝物です。
今回の作品の主役は水神である龍神です。
当初から、何を描くかはまったく考えずに現地で得られた出会いを元に描こうと決めていました。そして明日香村の各所を訪ね歩く中で、伝承芸能、行事、信仰と、どこに行っても必ずと言っていいほど出会ったのが、龍でした。ある日も取材を終え、龍、龍なのか・・・と思い巡らしながら歩く道の傍らに小さな祠が。ご挨拶して帰ろうと立ち寄ったお社の脇に石灯籠があり、そこに刻まれていた文字がなんと「龍神社」・・・!決定打でした。心を決め、飛鳥の龍を描き始めました。
飛鳥坐神社のおんだ祭、男綱女綱で一対の綱掛行事と、明日香村には夫婦和合、陰陽一対の習わしが多くあることが印象的で、本作も二色で一対の作品にしました。色は、伝承芸能の八雲琴の白と青の二色で天と地を表す二弦に倣いました。天井の高い会場で、天と地を結ぶ祈りの柱を建てたいと願いました。
中心に縒り合う龍は、こちらも阿吽の表情で陰陽和合、縒り合う綱、雨乞いの南無天踊りにも登場する稲わらの龍がイメージの源です。宝珠に向かって龍が駆け抜けたあと、雲がわき雨が振り、そしてお米が実ることを象徴して、飛沫のきらめきの様に、稲穂を彫り込みました。
綱掛行事や復元された南無天踊りを通し、お米を作り続けてきた農村の祈りが、何百年の時を経た今も、明日香村に暮らす人々に受け継がれていることに何よりも感動しました。この心の震えが今回の創作の源です。受け継がれてきた祈りの心、それを受け継ぐ思いに触れ、この手を通し、かたちにしたのが本作「縒合」(よりあい)です。
サイズは1.1×6メートルと、私がこれまで作ってきた中でも最大です。6メートルの一枚紙を彫ることは、たしかに簡単ではありません。予備の紙も時間の余裕もなく、失敗は許されません。でも、必ず仕上げられると確信がありました。確信を持って取り組めるよう、心身のコンディションを整え、アトリエを清浄に保ち、下絵を練り上げました。
ありがたいことに、作品をご覧になった方からたくさんのお言葉を頂戴しました。五穀豊穣やな、めでたいな、新嘗祭やな、、、と。
そうなのです。私は迂闊にもそのことにまったく思い至っていませんでした。会期は11月19日から27日、この間の23日は、まさしく新嘗祭の日だったのですね。
自分のおとぼけっぷりに呆れましたが、大切なことはいつも、見てくださる方が教えて下さいます。
夏に清々しい青田を見、秋に黄金色にたわわに実る稲穂が風になびくのを見、そして収穫を感謝する新嘗祭の日に作品を展示できたこと。何事かのはからいのようなこの流れに乗って創作できたことは、本当に幸運なことでした。
見てくださったお客様、飛鳥アートヴィレッジでお世話になった明日香村の皆様及び関係者の皆様、会場の犬養万葉記念館のあたたかいご協力、応援してくださった各地の皆様に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
あすかの大地、空、川、風、光、人々の心、すべてに、感謝をこめて。
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